インフルエンザワクチン 社会防衛論
2008年2月16日眠気覚ましのリポビタンを薬局に買いに行くと、昔、病院勤務していた頃にお世話になったMRさんに会った。
世間話のついでに、
「これだけ、ワクチン接種が拡がっているのに、どうしてインフルエンザの流行は繰り返されるのかな?」
と聞いた。それから、
「ぼくは、10代の頃はインフルエンザワクチンを強制接種されていたのに、毎年のようにインフルエンザに罹っていたのに、ここ10年以上、インフルエンザに罹らないのはどうしてかな?」
と聞いた。
まさか、答えが返ってくるとは思わなかったのだけど。
「コピー禁止でっせ」
といって、ペーパーをもらったので、ここに書き写す。
コピーじゃないから、約束違反にはならないしね。
・・・天然痘やポリオ(小児マヒ)では、一度接種すると発症を一生免れるので、別に調査しなくても天然痘やポリオ(小児マヒ)ワクチンの有効性は自明です。しかしインフルエンザは、予防接種を毎年うけていても発症することが少なくない。それゆえかなり計画的に調べないと、ワクチンの有効性を証明できません。
【有効だが無用】
=英国での試験=
11歳から19歳の男子800名のうち、親の許しを得た者を二群に分け、片方にはA型ワクチンを、他方にはB型ワクチンを接種します
m少年にはA型、n少年にはB型というように決め、毎年それを打ったのです。親の許しを得られなかった非接種グループも存在する。インフルエンザウイルスの遺伝子は変異しやすく、毎年のように新たな亜種が登場します。この試験は七〇年秋に開始され、A型ワクチンの材料としてA香港型ウイルスを使っていたところ、七二年十二月に流行したのはAイングランド型という新顔でした。
ともかくインフルエンザ症状の発症率を調べると、
●ワクチン非接種群は 14.8%
●A型ワクチン群の発症率は 3.0%
で、非接種群の発症率と比べると、統計的に意味がある差でした。つまり発症を予防する力があるので、「有効」と判定します。
そして14.8%の発症率が、2.9%になったのは、割合にして8割ほど減ったということですから、「有効率が80%」と表現します。
またA香港型に対するワクチンなのに、Aイングランド型の発症が減ったのですから、A型のなかであれば別のタイプが流行しても、ワクチンは有効であるようです(「Lancet」2巻116頁・1973年)。
ところが、その後も続行された試験から、意外な事実が判明しました。
まず74年春に生じたAポート型の流行では、
?以前にAイングランド型に自然感染していた子の発症はゼロなのに
?A型ワクチンをうけてきた子の発症率は高かったのです。
ワクチンが72年の流行時にインフルエンザ発症数を減らしたため、Aポート型に対する低抗力を獲得せずに終った子が増えたからでしょう。つまりワクチンが有効でインフルエンザを発症せずに終ると、十分な低抗力がつかないわけです。
つづいて76年春には、Aビクトリア型が流行しました。すると、
?以前Aポート型に自然感染した子の発症率は、やはりゼロ
?以前Aイングランド型に自然感染した子の発症率は2%
?それ以外の子の発症率は(A型ワクチンを打っていても)20%前後
にのぽりました。
全期間を通じてみると子どもらは、都合三タイプのA型ワクチンのうち、どれか一種だけをうけた、二種うけた、三種ともうけた、一度もうけなかった、という四グループに分かれますが、どのグループも、
?三回の流行をつうじての累積発症率が40〜50%の範囲におさまり、ワクチン歴による差がみられませんでした
・・・・「Lancet」1巻33頁・1979年
これが「有効であっても有用ではない」の意味です
(打ちつづけていても結局、累積発症率が同じになってしまうとすれば、有効とさえいえない、という考え方もありそうです)。
それでは、予防接種では、なぜ十分な低抗力がつかないのか。
ワクチンで得られた低抗力(免疫力)は、自然感染の場合とは異なります。自然感染であれば、インフルエンザウイルスは鼻から侵入し、鼻奥の粘膜で増殖するので、「血中抗体」のほかに「粘膜抗体」もつくられる。こうして形成された免疫力は長つづきし、一度得た免疫力が30年たっても保持され、同タイプウイルスの新たな発症を防いだことが確認されています。これに対しワクチンでつくられた血中抗体は、なぜかどんどん目減りしてしまうので、一年もすると、かりにワクチンと同じタイプが流行しても、防止効果を期待できません。これが予防接種をする場合には、毎年打たなければならない理由です。
要するに、インフルエンザワクチンで打った年の発症率を下げることができます。しかし自然感染した場合と異なり、つぎの流行に対する免疫力を獲得することは難しい。ワクチン接種を何度も繰り返していくと、ワクチンのタイプを変えても累積発症率は非接種群と変わらなくなる。つまり長期の予防効果は期待できない。これでは有用ではないというより無用でしょう・・・
とまあ、こういう内容である。
つまり、このペーパーによると、インフルエンザワクチン社会防衛論は、根拠がないということになる。
でも、これは英国の30年前の実験と理論上の話なので、実際の日本の統計データで検証してみた。
まず、国立感染症研究所観戦情報センター(http://idsc.nih.go.jp/iasr/index-j.html)による超過死亡概念による推計死亡者数を見てみるとhttp://idsc.nih.go.jp/iasr/21/250/graph/df25031.gif
毎年増え続けています。
(なぜ、超過死亡という概念を用いるかについては、国立感染症研究所のここを読んで欲しい。
http://idsc.nih.go.jp/iasr/21/250/dj2503.html)
そして、こちらが、インフルエンザの製造量・使用量の推移
http://www-bm.mhlw.go.jp/shingi/2007/11/dl/s1130-12k.pdf
両者の相関関係なんて、微塵もありません。
というわけで、インフルエンザワクチン社会防衛論は、統計学的にも完全否定されます。
もちろん、インフルエンザの超過死亡者数の増加には、高齢者の増加現象という因子が大きく関わっていることはわかります。
しかし、一方で、高齢者のインフルエンザ摂取率が上昇してきているのも事実です。
以上をまとめると、
インフルエンザワクチンの有効性は、「個人的に」「単年度単位」であれば認められるが、「社会的に」「長期的視野」で考えると、全く無意味である、ということになる。
インフルエンザによる死亡者数の増加を考えると、タミフルの効用もないようだ。
(1日だけ早く治るらしい)
世間話のついでに、
「これだけ、ワクチン接種が拡がっているのに、どうしてインフルエンザの流行は繰り返されるのかな?」
と聞いた。それから、
「ぼくは、10代の頃はインフルエンザワクチンを強制接種されていたのに、毎年のようにインフルエンザに罹っていたのに、ここ10年以上、インフルエンザに罹らないのはどうしてかな?」
と聞いた。
まさか、答えが返ってくるとは思わなかったのだけど。
「コピー禁止でっせ」
といって、ペーパーをもらったので、ここに書き写す。
コピーじゃないから、約束違反にはならないしね。
・・・天然痘やポリオ(小児マヒ)では、一度接種すると発症を一生免れるので、別に調査しなくても天然痘やポリオ(小児マヒ)ワクチンの有効性は自明です。しかしインフルエンザは、予防接種を毎年うけていても発症することが少なくない。それゆえかなり計画的に調べないと、ワクチンの有効性を証明できません。
【有効だが無用】
=英国での試験=
11歳から19歳の男子800名のうち、親の許しを得た者を二群に分け、片方にはA型ワクチンを、他方にはB型ワクチンを接種します
m少年にはA型、n少年にはB型というように決め、毎年それを打ったのです。親の許しを得られなかった非接種グループも存在する。インフルエンザウイルスの遺伝子は変異しやすく、毎年のように新たな亜種が登場します。この試験は七〇年秋に開始され、A型ワクチンの材料としてA香港型ウイルスを使っていたところ、七二年十二月に流行したのはAイングランド型という新顔でした。
ともかくインフルエンザ症状の発症率を調べると、
●ワクチン非接種群は 14.8%
●A型ワクチン群の発症率は 3.0%
で、非接種群の発症率と比べると、統計的に意味がある差でした。つまり発症を予防する力があるので、「有効」と判定します。
そして14.8%の発症率が、2.9%になったのは、割合にして8割ほど減ったということですから、「有効率が80%」と表現します。
またA香港型に対するワクチンなのに、Aイングランド型の発症が減ったのですから、A型のなかであれば別のタイプが流行しても、ワクチンは有効であるようです(「Lancet」2巻116頁・1973年)。
ところが、その後も続行された試験から、意外な事実が判明しました。
まず74年春に生じたAポート型の流行では、
?以前にAイングランド型に自然感染していた子の発症はゼロなのに
?A型ワクチンをうけてきた子の発症率は高かったのです。
ワクチンが72年の流行時にインフルエンザ発症数を減らしたため、Aポート型に対する低抗力を獲得せずに終った子が増えたからでしょう。つまりワクチンが有効でインフルエンザを発症せずに終ると、十分な低抗力がつかないわけです。
つづいて76年春には、Aビクトリア型が流行しました。すると、
?以前Aポート型に自然感染した子の発症率は、やはりゼロ
?以前Aイングランド型に自然感染した子の発症率は2%
?それ以外の子の発症率は(A型ワクチンを打っていても)20%前後
にのぽりました。
全期間を通じてみると子どもらは、都合三タイプのA型ワクチンのうち、どれか一種だけをうけた、二種うけた、三種ともうけた、一度もうけなかった、という四グループに分かれますが、どのグループも、
?三回の流行をつうじての累積発症率が40〜50%の範囲におさまり、ワクチン歴による差がみられませんでした
・・・・「Lancet」1巻33頁・1979年
これが「有効であっても有用ではない」の意味です
(打ちつづけていても結局、累積発症率が同じになってしまうとすれば、有効とさえいえない、という考え方もありそうです)。
それでは、予防接種では、なぜ十分な低抗力がつかないのか。
ワクチンで得られた低抗力(免疫力)は、自然感染の場合とは異なります。自然感染であれば、インフルエンザウイルスは鼻から侵入し、鼻奥の粘膜で増殖するので、「血中抗体」のほかに「粘膜抗体」もつくられる。こうして形成された免疫力は長つづきし、一度得た免疫力が30年たっても保持され、同タイプウイルスの新たな発症を防いだことが確認されています。これに対しワクチンでつくられた血中抗体は、なぜかどんどん目減りしてしまうので、一年もすると、かりにワクチンと同じタイプが流行しても、防止効果を期待できません。これが予防接種をする場合には、毎年打たなければならない理由です。
要するに、インフルエンザワクチンで打った年の発症率を下げることができます。しかし自然感染した場合と異なり、つぎの流行に対する免疫力を獲得することは難しい。ワクチン接種を何度も繰り返していくと、ワクチンのタイプを変えても累積発症率は非接種群と変わらなくなる。つまり長期の予防効果は期待できない。これでは有用ではないというより無用でしょう・・・
とまあ、こういう内容である。
つまり、このペーパーによると、インフルエンザワクチン社会防衛論は、根拠がないということになる。
でも、これは英国の30年前の実験と理論上の話なので、実際の日本の統計データで検証してみた。
まず、国立感染症研究所観戦情報センター(http://idsc.nih.go.jp/iasr/index-j.html)による超過死亡概念による推計死亡者数を見てみるとhttp://idsc.nih.go.jp/iasr/21/250/graph/df25031.gif
毎年増え続けています。
(なぜ、超過死亡という概念を用いるかについては、国立感染症研究所のここを読んで欲しい。
http://idsc.nih.go.jp/iasr/21/250/dj2503.html)
そして、こちらが、インフルエンザの製造量・使用量の推移
http://www-bm.mhlw.go.jp/shingi/2007/11/dl/s1130-12k.pdf
両者の相関関係なんて、微塵もありません。
というわけで、インフルエンザワクチン社会防衛論は、統計学的にも完全否定されます。
もちろん、インフルエンザの超過死亡者数の増加には、高齢者の増加現象という因子が大きく関わっていることはわかります。
しかし、一方で、高齢者のインフルエンザ摂取率が上昇してきているのも事実です。
以上をまとめると、
インフルエンザワクチンの有効性は、「個人的に」「単年度単位」であれば認められるが、「社会的に」「長期的視野」で考えると、全く無意味である、ということになる。
インフルエンザによる死亡者数の増加を考えると、タミフルの効用もないようだ。
(1日だけ早く治るらしい)
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