● 脳死移植10年 もう海外で臓器はもらえない
臓器移植法にもとづいて、脳死した人から心臓などが初めて提供されたのは、1999年2月28日、高知赤十字病院でのことだった。
それから10年がたとうとしている。だが、この間に日本で行われた脳死移植は81例にとどまる。
米国では毎年数千例、欧州の主要国でも年間数百例の脳死移植があるのに対して、あまりにも少ない。このため、幼児から大人まで大勢の日本人が移植目的で海外に渡航している。
こうした日本の現状は臓器売買にもつながる「移植ツーリズム」と批判されている。世界保健機関(WHO)は5月の総会で、臓器移植は自国で完結させるべきだ、との指針を決定する見通しだ。
国際社会の我慢が、10年の節目に限界を迎えた、ということだろう。日本がこの状況を続けることは、もうできなくなる。
日本の脳死移植が少ないのはなぜか。現行の臓器移植法が、脳死した人から心臓などの提供を受ける際に、世界で例のない厳しい条件を定めているからだ。
欧米などでは、本人の意思が分からない場合は家族の同意で臓器提供が可能である。ところが日本では、まず、本人がカードなど書面で提供意思を残していることが絶対条件だ。それでも家族が反対すれば移植はできない。
提供意思の表示能力があるのは15歳以上とされているため、乳幼児は臓器の大きさが合わず、国内での移植はほぼ不可能である。
このため、支援金を募って米国などで移植を受ける子どもが絶えない。大人も、中国で大半が死刑囚から摘出したと見られる臓器の移植を受けるなどしてきた。
WHOの指針が決定すれば、外国で臓器をもらうことはますます難しくなるだろう。臓器移植法の改正が避けられまい。
内閣府の世論調査では、欧米並みの同意基準で脳死移植を認めてもよい、とする人が半数を超えている。子どもを脳死判定の対象にすることに慎重姿勢だった日本小児科学会も、方針を見直す方向で検討委員会をつくる。
しかし、政治の動きは鈍い。
国会には、欧米同様の基準で臓器提供を可能にする案や、提供意思を示せる年齢を12歳まで広げる案などが提出されてはいる。
ところが、実質的な審議が一向に始まらない。WHOの指針決定を目前にしてもなお、国会は棚上げにし続けるのだろうか。
「命のリレー」を早く、国内だけでできるようにしたい。
(2009年2月27日 読売新聞)
● 脳死移植10年 臓器提供81例のみ
5月には「渡航」自粛指針 希望患者1万2000人超
臓器移植法に基づく最初の脳死移植が実施されてから、28日で丸10年。これまで81人が脳死下で臓器提供したが、依然、臓器不足は解消されず、乳幼児への移植は極めて難しい状況が続く。
海外で移植する患者が後を絶たない中、世界保健機関(WHO)は5月、渡航移植の自粛を強く促す方針だ。日本は早急な法改正を迫られている。(科学部 瀬畠義孝、木村達矢)
15歳未満は禁止
「日本で移植できていたらと思うと悔しい」
横浜市の会社員中沢啓一郎さん(37)は、昨年12月、心臓移植を受けられずに、入院先の米カリフォルニア州の病院で、長男、聡太郎ちゃん(1)を失った無念さに肩を震わせる。約1億8900万円の募金を集め、渡航して6日目の悲劇だった。「あと2週間生きていれば、移植が受けられたのに」と語る。
臓器移植法が施行された1997年以降も、聡太郎ちゃんのような子どもの渡航移植は絶えない。同法が15歳未満の小児の臓器提供を禁止しているからだ。大人の臓器でも小さかったり、肝臓のように分割したりできれば小児への移植は可能だ。しかし心臓はそうはいかない。
同法施行後、国内で脳死臓器提供81例のうち心臓移植が行われたのは65人、うち未成年者は5人と少ない。日本小児循環器学会の調べによると、この間、欧米で心臓移植を受けた患者は約80人。ほとんどが小児だ。
腎臓、肝臓を含め移植を希望する国内の患者1万2000人以上のうち、脳死移植の幸運に恵まれるのはほんの一握り。そのため海外に渡る患者も多い。厚生労働省研究班の2006年の調査では、過去に少なくとも522人の患者が、米国や中国、フィリピンなどで臓器移植を受けたことが判明した。民間の移植紹介業者を通じて行われるアジアでの移植は臓器売買の疑いも指摘され、国際的な批判も高まる。
海外からの批判
昨年5月、日本も加盟する国際移植学会は、「外国人が臓器提供を受け、地元国民の移植の機会を奪うのは公平・正義に反する」とし、渡航移植を原則禁止とする「イスタンブール宣言」を採択した。
これを受け、WHOは5月の総会で、加盟国に対する臓器移植の指導指針に臓器移植を自国で完結させることを盛り込む方針だ。
指針に強制力はないが、WHOの臓器移植担当官、ルーク・ノエル氏は日本の臓器移植の現状について、「渡航移植できるのが一部の資金力がある人だけなのは不公平」と法改正の必要性を説く。
WHOの指針で、渡航移植の門戸はさらに狭まることが予想される。
すでに豪州や英国などは日本人の受け入れを中止。ドイツも同国で1300例の移植を行った南和友・日本大教授の縁で、過去18人を受け入れたが、来月で中止となる見通し。「ドイツ人も移植できずに3分の2は亡くなる。国民の批判は強い」(南教授)という。
20を超える病院が日本人を受け入れる米国には、「提供臓器の5%まで外国人に移植できる」というルールがある。移植患者を支援する「トリオ・ジャパン」の荒波嘉男事務局長は「当面は受け入れてくれるだろう」とみる。しかし、大阪大の福島教偉准教授は「米国民の反発も高まっている。施設数は間違いなく減っていくだろう」と話す。
政局混迷 進まぬ法改正 国会審議されず
厳しい制度を緩和し、臓器提供を大幅に増やすには現行法を改正する必要がある。国民の意見が割れる生命倫理の問題である臓器移植法は1997年に議員立法で成立したことから、改正に向けても超党派の議員が三つの改正案を提案している。
3案は、患者の意思が不明でも、家族の同意だけで臓器提供を可能にすると同時に、臓器提供の年齢制限を撤廃する「家族同意案」のほか、臓器提供できる年齢を「12歳以上」に引き下げる「年齢緩和案」、現行法をさらに厳格にしようとする「規制強化案」。
だが、3案は衆議院に2006~07年に提出された以降、政局混迷の中で実質的な審議はされないままとなっている。
移植患者団体のNPO法人日本移植者協議会の大久保通方理事長は「結論が出しにくい上、選挙の票にならないので、重要法案の陰で後回しにされている」と説明する。
同協議会や日本移植学会は、渡航移植禁止の「外圧」を利用して臓器移植法の改正を強く働きかける方針だ。大久保理事長は「これ以上、国会が審議しないという不作為は許されない」と指弾する。
世界的に厳しい 日本の条件
日本での脳死移植は先進国の中で圧倒的に少ない。人口100万人当たり脳死臓器提供者数は0・8人、最も多いスペインの34・3人、米国の26・6人と比べると差は歴然だ。年間約1万人が脳死になると言われるが、脳死移植が普及しないのは、世界的に見て厳しい条件を課しているからだ。生命倫理問題に詳しい米本昌平・東大特任教授は、「原因は日本人の死生観ではなく、過剰に厳しい制度だ」と断言する。
15歳未満の臓器提供を禁止し、臓器提供の条件として、本人の生前の意思表示に加え、家族の同意を求めている先進国は日本だけだ。2008年の国の世論調査で「脳死になったら臓器提供したい」という国民は、10年前の32%から44%に増加したが、意思表示カードやシールの所有率はまだ8%と低い。カードを持っていても家族が反対し、臓器提供ができなかった例もある。
脳死判定も諸外国にない厳密さを求める。医師が脳死と診断した後にも法的な脳死判定を2回繰り返す。担当者は2、3日拘束されるため、ある救急医は「疲弊した現場には負担が大き過ぎる」と漏らす。
実際、厚生労働省研究班が06年度、全国の臓器提供施設などに行った調査でも、30%が「(脳死が疑われても)判定していない」と回答する。
(2009年2月27日 読売新聞)
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「基準が厳しいから」などという、アホなことを言っている以上、現状は大きく変わらない、と断言しよう。
日本で臓器提供者が増えないのは、臓器売買を認めないからだ。理由はこの1点に尽きる。
2年前に、書いた文章を載せておく。
「ちなみに、ぼくは基本的には臓器移植は反対だ。
なぜなら、臓器移植は必ず犯罪行為を招くからだ。希少な臓器を殺人という手段で供給する結果を招くからだ。
現在、子どもの臓器移植は海外でなされることが多いが、例えばアメリカで臓器移植するのに7〜8000万円、時には1億円以上も費用がかかる現実を、誰が正当に説明できるのか。
ほんの10ほど年前(7〜8年前かも)、3〜4000万円であった移植費用が、どうして倍増(以上)したのか、合理的な理由を説明できる人がいるのか。
「だって、海外では、病院と医師が多額の保証金(デポジット)を要求するから・・・」
という反論も考えられるが、
それにしても、なんで保証金が急に高額になるのか、保証金という以上、必要経費以外は返金されるはずであるが、返金されたという話を聞いた事がない(まあ、家族が募金をそのまま着服しているだけかもしれないが)。
というわけで、臓器移植の陰で無実の子どもの命が奪われるのは耐えられないから、臓器移植には基本的に反対だ。
したがって、もし臓器移植するなら、無実の子どもの命が奪われないようにして欲しい。
すなわち、闇にお金と命が消えないように、警察を仲介人とした公的臓器売買を認めるべきだと思う。建て前で無償なんかにするから、怪しいお金が動くのだ。
警察を仲介人とするなら、レシピエントの死因、身元確認もはっきりするだろう。
臓器売買を認めると、貧富で格差が出るという反論もあろうが、だいたい、世界に二つとない他人のからだの一部を、ただでもらおうなんて、虫が良すぎるのだ。
しかも、現に海外での高額移植がまかり通っている現状がすでに、格差を認めているではないか。
それに高く売れるなら、ドナー希望者も圧倒的に増える。結果として、臓器の値段は市場原理で下がる。移植を待つ患者側にも利益だ。安くなれば、犯罪組織もうまみがなくなり撤退する。
国内で売血を禁止しながら、海外から血液を買う日本(赤十字社)の偽善的建て前とよく似ている。
売血を禁止するから、慢性的な血液不足を招き、海外から血を買う吸血鬼呼ばわりされるのだ。
売血を認めると、病的な血液が供給されやすくなる、というアホな意見には、検査すればいいだろう、と答えよう。それに、血液製剤という形で、得体の知れない血液を海外から現に買っているではないか。
きれい事ばかり言って、していることとの矛盾には無頓着。
他国の人の血液や臓器を買うような行為は止めようよ。
恥ずかしいから。」
臓器が高く売れるなら、遺族の同意だって激増するだろう。
奇麗事じゃないんだ。
見たくない部分を闇に隠すんじゃなくて、きちんと透明性を持って議論すべきだ。
臓器移植法にもとづいて、脳死した人から心臓などが初めて提供されたのは、1999年2月28日、高知赤十字病院でのことだった。
それから10年がたとうとしている。だが、この間に日本で行われた脳死移植は81例にとどまる。
米国では毎年数千例、欧州の主要国でも年間数百例の脳死移植があるのに対して、あまりにも少ない。このため、幼児から大人まで大勢の日本人が移植目的で海外に渡航している。
こうした日本の現状は臓器売買にもつながる「移植ツーリズム」と批判されている。世界保健機関(WHO)は5月の総会で、臓器移植は自国で完結させるべきだ、との指針を決定する見通しだ。
国際社会の我慢が、10年の節目に限界を迎えた、ということだろう。日本がこの状況を続けることは、もうできなくなる。
日本の脳死移植が少ないのはなぜか。現行の臓器移植法が、脳死した人から心臓などの提供を受ける際に、世界で例のない厳しい条件を定めているからだ。
欧米などでは、本人の意思が分からない場合は家族の同意で臓器提供が可能である。ところが日本では、まず、本人がカードなど書面で提供意思を残していることが絶対条件だ。それでも家族が反対すれば移植はできない。
提供意思の表示能力があるのは15歳以上とされているため、乳幼児は臓器の大きさが合わず、国内での移植はほぼ不可能である。
このため、支援金を募って米国などで移植を受ける子どもが絶えない。大人も、中国で大半が死刑囚から摘出したと見られる臓器の移植を受けるなどしてきた。
WHOの指針が決定すれば、外国で臓器をもらうことはますます難しくなるだろう。臓器移植法の改正が避けられまい。
内閣府の世論調査では、欧米並みの同意基準で脳死移植を認めてもよい、とする人が半数を超えている。子どもを脳死判定の対象にすることに慎重姿勢だった日本小児科学会も、方針を見直す方向で検討委員会をつくる。
しかし、政治の動きは鈍い。
国会には、欧米同様の基準で臓器提供を可能にする案や、提供意思を示せる年齢を12歳まで広げる案などが提出されてはいる。
ところが、実質的な審議が一向に始まらない。WHOの指針決定を目前にしてもなお、国会は棚上げにし続けるのだろうか。
「命のリレー」を早く、国内だけでできるようにしたい。
(2009年2月27日 読売新聞)
● 脳死移植10年 臓器提供81例のみ
5月には「渡航」自粛指針 希望患者1万2000人超
臓器移植法に基づく最初の脳死移植が実施されてから、28日で丸10年。これまで81人が脳死下で臓器提供したが、依然、臓器不足は解消されず、乳幼児への移植は極めて難しい状況が続く。
海外で移植する患者が後を絶たない中、世界保健機関(WHO)は5月、渡航移植の自粛を強く促す方針だ。日本は早急な法改正を迫られている。(科学部 瀬畠義孝、木村達矢)
15歳未満は禁止
「日本で移植できていたらと思うと悔しい」
横浜市の会社員中沢啓一郎さん(37)は、昨年12月、心臓移植を受けられずに、入院先の米カリフォルニア州の病院で、長男、聡太郎ちゃん(1)を失った無念さに肩を震わせる。約1億8900万円の募金を集め、渡航して6日目の悲劇だった。「あと2週間生きていれば、移植が受けられたのに」と語る。
臓器移植法が施行された1997年以降も、聡太郎ちゃんのような子どもの渡航移植は絶えない。同法が15歳未満の小児の臓器提供を禁止しているからだ。大人の臓器でも小さかったり、肝臓のように分割したりできれば小児への移植は可能だ。しかし心臓はそうはいかない。
同法施行後、国内で脳死臓器提供81例のうち心臓移植が行われたのは65人、うち未成年者は5人と少ない。日本小児循環器学会の調べによると、この間、欧米で心臓移植を受けた患者は約80人。ほとんどが小児だ。
腎臓、肝臓を含め移植を希望する国内の患者1万2000人以上のうち、脳死移植の幸運に恵まれるのはほんの一握り。そのため海外に渡る患者も多い。厚生労働省研究班の2006年の調査では、過去に少なくとも522人の患者が、米国や中国、フィリピンなどで臓器移植を受けたことが判明した。民間の移植紹介業者を通じて行われるアジアでの移植は臓器売買の疑いも指摘され、国際的な批判も高まる。
海外からの批判
昨年5月、日本も加盟する国際移植学会は、「外国人が臓器提供を受け、地元国民の移植の機会を奪うのは公平・正義に反する」とし、渡航移植を原則禁止とする「イスタンブール宣言」を採択した。
これを受け、WHOは5月の総会で、加盟国に対する臓器移植の指導指針に臓器移植を自国で完結させることを盛り込む方針だ。
指針に強制力はないが、WHOの臓器移植担当官、ルーク・ノエル氏は日本の臓器移植の現状について、「渡航移植できるのが一部の資金力がある人だけなのは不公平」と法改正の必要性を説く。
WHOの指針で、渡航移植の門戸はさらに狭まることが予想される。
すでに豪州や英国などは日本人の受け入れを中止。ドイツも同国で1300例の移植を行った南和友・日本大教授の縁で、過去18人を受け入れたが、来月で中止となる見通し。「ドイツ人も移植できずに3分の2は亡くなる。国民の批判は強い」(南教授)という。
20を超える病院が日本人を受け入れる米国には、「提供臓器の5%まで外国人に移植できる」というルールがある。移植患者を支援する「トリオ・ジャパン」の荒波嘉男事務局長は「当面は受け入れてくれるだろう」とみる。しかし、大阪大の福島教偉准教授は「米国民の反発も高まっている。施設数は間違いなく減っていくだろう」と話す。
政局混迷 進まぬ法改正 国会審議されず
厳しい制度を緩和し、臓器提供を大幅に増やすには現行法を改正する必要がある。国民の意見が割れる生命倫理の問題である臓器移植法は1997年に議員立法で成立したことから、改正に向けても超党派の議員が三つの改正案を提案している。
3案は、患者の意思が不明でも、家族の同意だけで臓器提供を可能にすると同時に、臓器提供の年齢制限を撤廃する「家族同意案」のほか、臓器提供できる年齢を「12歳以上」に引き下げる「年齢緩和案」、現行法をさらに厳格にしようとする「規制強化案」。
だが、3案は衆議院に2006~07年に提出された以降、政局混迷の中で実質的な審議はされないままとなっている。
移植患者団体のNPO法人日本移植者協議会の大久保通方理事長は「結論が出しにくい上、選挙の票にならないので、重要法案の陰で後回しにされている」と説明する。
同協議会や日本移植学会は、渡航移植禁止の「外圧」を利用して臓器移植法の改正を強く働きかける方針だ。大久保理事長は「これ以上、国会が審議しないという不作為は許されない」と指弾する。
世界的に厳しい 日本の条件
日本での脳死移植は先進国の中で圧倒的に少ない。人口100万人当たり脳死臓器提供者数は0・8人、最も多いスペインの34・3人、米国の26・6人と比べると差は歴然だ。年間約1万人が脳死になると言われるが、脳死移植が普及しないのは、世界的に見て厳しい条件を課しているからだ。生命倫理問題に詳しい米本昌平・東大特任教授は、「原因は日本人の死生観ではなく、過剰に厳しい制度だ」と断言する。
15歳未満の臓器提供を禁止し、臓器提供の条件として、本人の生前の意思表示に加え、家族の同意を求めている先進国は日本だけだ。2008年の国の世論調査で「脳死になったら臓器提供したい」という国民は、10年前の32%から44%に増加したが、意思表示カードやシールの所有率はまだ8%と低い。カードを持っていても家族が反対し、臓器提供ができなかった例もある。
脳死判定も諸外国にない厳密さを求める。医師が脳死と診断した後にも法的な脳死判定を2回繰り返す。担当者は2、3日拘束されるため、ある救急医は「疲弊した現場には負担が大き過ぎる」と漏らす。
実際、厚生労働省研究班が06年度、全国の臓器提供施設などに行った調査でも、30%が「(脳死が疑われても)判定していない」と回答する。
(2009年2月27日 読売新聞)
*******************************
「基準が厳しいから」などという、アホなことを言っている以上、現状は大きく変わらない、と断言しよう。
日本で臓器提供者が増えないのは、臓器売買を認めないからだ。理由はこの1点に尽きる。
2年前に、書いた文章を載せておく。
「ちなみに、ぼくは基本的には臓器移植は反対だ。
なぜなら、臓器移植は必ず犯罪行為を招くからだ。希少な臓器を殺人という手段で供給する結果を招くからだ。
現在、子どもの臓器移植は海外でなされることが多いが、例えばアメリカで臓器移植するのに7〜8000万円、時には1億円以上も費用がかかる現実を、誰が正当に説明できるのか。
ほんの10ほど年前(7〜8年前かも)、3〜4000万円であった移植費用が、どうして倍増(以上)したのか、合理的な理由を説明できる人がいるのか。
「だって、海外では、病院と医師が多額の保証金(デポジット)を要求するから・・・」
という反論も考えられるが、
それにしても、なんで保証金が急に高額になるのか、保証金という以上、必要経費以外は返金されるはずであるが、返金されたという話を聞いた事がない(まあ、家族が募金をそのまま着服しているだけかもしれないが)。
というわけで、臓器移植の陰で無実の子どもの命が奪われるのは耐えられないから、臓器移植には基本的に反対だ。
したがって、もし臓器移植するなら、無実の子どもの命が奪われないようにして欲しい。
すなわち、闇にお金と命が消えないように、警察を仲介人とした公的臓器売買を認めるべきだと思う。建て前で無償なんかにするから、怪しいお金が動くのだ。
警察を仲介人とするなら、レシピエントの死因、身元確認もはっきりするだろう。
臓器売買を認めると、貧富で格差が出るという反論もあろうが、だいたい、世界に二つとない他人のからだの一部を、ただでもらおうなんて、虫が良すぎるのだ。
しかも、現に海外での高額移植がまかり通っている現状がすでに、格差を認めているではないか。
それに高く売れるなら、ドナー希望者も圧倒的に増える。結果として、臓器の値段は市場原理で下がる。移植を待つ患者側にも利益だ。安くなれば、犯罪組織もうまみがなくなり撤退する。
国内で売血を禁止しながら、海外から血液を買う日本(赤十字社)の偽善的建て前とよく似ている。
売血を禁止するから、慢性的な血液不足を招き、海外から血を買う吸血鬼呼ばわりされるのだ。
売血を認めると、病的な血液が供給されやすくなる、というアホな意見には、検査すればいいだろう、と答えよう。それに、血液製剤という形で、得体の知れない血液を海外から現に買っているではないか。
きれい事ばかり言って、していることとの矛盾には無頓着。
他国の人の血液や臓器を買うような行為は止めようよ。
恥ずかしいから。」
臓器が高く売れるなら、遺族の同意だって激増するだろう。
奇麗事じゃないんだ。
見たくない部分を闇に隠すんじゃなくて、きちんと透明性を持って議論すべきだ。
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