ちょっと硬い話だけど…以下は、月刊雑誌『クオリティ』2009年5月号からの引用。
● 連載特集 北海道の「医乱」
 医師不足を招いたドクターと地域医療再生請負人の蜜月関係

 本誌は、医療に関する情報提供を呼びかけたところ、全道から多くの手紙、FAX等をいただいた。その中には患者としての体験談ばかりか医師から現状を憂う切々たる訴えもあった。こうした情報と本誌の取材をもとに連載で「北海道の医乱」の現状をリポートする。(「北海道の医乱」特集班)
 道内、いや全国的にマスコミで医師不足が取り上げられているが、特に深刻な医師不足に悩むのは、産婦人科と小児科だ。なかでも小児科は、深夜に医師が電話で呼び出され、病院に駆けつけるといった”コンビニ受診”が社会問題となっている。患者にとっては、いざという時に頼りになる駆け込み寺としてありかたい話であるが、その背景には核家族化により親から子育てを学べないで母親になった女性が乳・幼児の扱いに戸惑うといった社会事情もあるようだ。
 今回紹介するのは、道内の某町立X病院の小児科医Aドクターと、地域医療再生請負人を名乗るドクターBの話だ。AドクターはX病院の院長だったが、町立病院の赤字問題で診療所化する際、「地方医療にとって絶対入院ベッドが必要だ」と主張。結局、数億円もの町費をかけて有床の診療所に建て替えた。ところが、有床診療所としてスタートしたものの、Aドクターは、「3日に1回の当直はきつい。X病院を辞めたい」と退職。その後、院内の他の医師も相次いで退職、結局X診療所は医師不足に陥った。それに目を付けたのが医療再生請負人・ドクターBだった。
 X診療所を辞めたドクターAはドクターBが理事長を務める医療法人Yに所属することになった。その頃からドクターBは「医師不足に悩む地方医療に手を貸したい」と言ってX診療所の経営に口出しするようになったという。ドクターBの指示で医療法人Yから派遣医が送られるようになり、ドクターBもそこで診療することもあったという。
「小児患者は血管が細いため、小児科では点滴はドクターが直接おこない、看護師にやらせないのが通常なんです。それなのにドクターBは『お前ら、こんなことも出来ないのか』と怒鳴り、看護師を「お前ら」呼ばわりする。まさに暴君ですね。ドクターBが関わるようになってX診療所のコ・メディカルたちもどんどん辞めていきました」とX診療所をよく知るC氏は内情を明かす。

再生請負人よりブローカー

 しかもX診療所を退職したドクターAは医療法人Yからの派遣という形でX診療所に復帰したのである。ドクターAは遣東のへき地に派遣されることになったが、ドクターAは『へき地に行きたくない。実家があるので派遣医としてX診療所に復帰したい』とドクターBに願い出たからだ。前出・C氏は「ドクターAは診療所化の際に地域医療の理想を掲げ有床にこだわったが、無床なら全も人手もかからなかった。近隣の町に大病院があるのだから病診連携で入院を必要とする患者さんを送れば有床にする必要も無かったんです。院内のスタッフを巻き込んだ挙句、自己都合で辞め、自己都合で復帰を願い出る。こんなわがままな人間と、悩みにつけ込んだ人間のために町全体が迷惑している」と憤酒やる方ない様子で語る。
 C氏によれば、医療法人Yと町との契約は3ヵ月おきに更新する契約。「Bドクターが医師を引き揚げるといえば、町はドクターBの言いなりにならざるを得ない。ドクターBは医療再生請負人というよりブローカーです」。ちなみにドクターBの報酬は年間1000万円程度で、そのうち1割にあたる100万円が医療法人Yに手数料として入るという。
 実はドクターBの背後にはD氏の存在がある。D氏は医師ではないが、自ら医療経営アドバイザーと称し、ドクターBと組んで遣内赤字病院に深く関与している。
 一医療法人がその運営する以外の公的病院の医師派遣に関与すること自体、異常な事態だと言える。
 かつて医師の派遣については、大学医局(教授)が握っていたが、5年前の新臨床研修制度の実施で医師と民間医療機関の手にゆだねられた。地方医療再生を大義名分に自己保身を図る者がいるとするなら、再生どころか崩壊に拍車をかけることになる。
(引用終わり)



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