そうなんだ!と思えば・・・トホホ。
2010年9月3日 日常新型インフル、早期投薬で死亡率に差 横浜の医師ら結論(朝日新聞)
新型の豚インフルエンザによる日本の死亡率が世界的に極めて低かったのは、48時間以内に治療を受けた患者が多かったためだ。けいゆう病院(横浜市)の菅谷憲夫医師らのチームが国内で1千人の小児患者を分析してこう結論づけた。3日から香港で開かれるインフル対策の国際会議で発表する。
昨年6月から今年1月までに国内25病院に入院した小児の1千人分(平均年齢6.4歳)を調べた。亡くなったのは1人。症状は65%が息ができなくなるなどの呼吸器障害で、26%が脳症やけいれんなどの神経に障害が出るものだった。9%は脱水症状。
ほぼ全員の984人が抗ウイルス薬を飲んでいた。症状が出てから抗ウイルス薬を飲むまでの時間がわかった667人では、48時間以内に薬を飲んでいたのは89%だった。このうち29%が12時間以内、38%が12~24時間以内と、さらに早い時期に飲んでいた。
米国では48時間以内は39~51%にとどまった。抗ウイルス薬を飲んでいた小児の割合自体も75~79%と低かった。アルゼンチンは48時間以内が12~13%だった。
子どもから大人までの全体の死者数は米国が推計約1万2千人に対し日本は約200人と少ない。厚生労働省によると、人口10万人あたりの死亡率は、米国3.96(推計)、カナダ1.32、メキシコ1.05。日本0.16だった。
菅谷さんは「医療水準が変わらない米国などでは薬を飲み始めるのが発症から何日もたってからという例が少なくない。死亡率の差は薬を飲む時期が早かったとしか考えられない」と話している。(熊井洋美)
************************
ワクチンが実はほとんど効き目がなかった、ということが明らかになってきて、
(例えば、ドイツでは、感染者数約88000人、摂取率が5%以下であるにもかかわらず、死亡者60人、ポーランドは、国家がワクチンを輸入すらしていないにもかかわらず、死亡者16人)
ぼくも実は、タミフルが予想以上に効いたのかも、と思ってた。
まあ、ただいつもの癖で、エビデンスを探してたら、この記事がけっこううさんくさいことが分ってきた。
例えば、「米国の死者数が推計12000人」となっているが、WHOの南北アメリカ地域を統括するPAHOのHPを見てみると。。。
(PAHOは、WHOの各支部の中でも、最後まで数値報告をしている。)
http://new.paho.org/hq/index.php?option=com_content&task=view&id=2929&Itemid=2295
のページの
Regional Update, Pandemic (H1N1) 2009. (Published on May 24, 2010)
のレポートを読んでもらえばわかるんだけど(全部英語で読みにくいけど)、
そのレポートの13ページに、今年の5月24日時点での、南北アメリカの累積死者数が発表されている。
それによると、米国の死者数は、累積で2718人とある。しかも、その日付以降、死者数の報告がない。また、注意書きを読むと、米国の死者数は、インフルエンザ全体の死者数とある。つまり、新型インフルの死者数は、それ以下ということだ。
まあ、朝日の記事は、「推計」としているので、ウソとは言わないが、それにしても、この医師は、WHO以上の正確な情報をニュースソースとして持っているんだろうか?
また、
「厚生労働省によると、人口10万人あたりの死亡率は、米国3.96(推計)、カナダ1.32、メキシコ1.05。日本0.16だった。」
という記事は、明らかにミスリードの数字だ。
薬剤投与の時間の差を問題とする以上、比較すべきは、「人口当たり」ではなくて、「感染者数当たり」の死者数のはずだ。
アメリカの感染者数が、日本の約7倍と多い以上(感染者数報告は、WHOが2009年12月段階で集計を取りやめているので、その時点の数字を根拠にしている。)、「人口当たり」で数値を取るのは、明らかにミスリードだ。
(この程度のことがわからないのか?それとも悪意でしているのか?どちらにしても、酷い話だ。)
そこで、WHO(PAHO)の死亡者数を根拠に、感染者数当たりの志望者の割合を計算すると、
(日米間で、死亡者数が約12.5倍、感染者数が約7倍の差があるので)
アメリカの方が、死亡率が約1.7倍多いことになる。
たしかに、1.7倍は大きな数字だが、厚生労働省が発表する25倍の数字とは、明らかにインパクトが異なる。
ちなみに、WHO(PAHO)の報告によると、メキシコの死者数は1228人。
さすがに騒がれただけのことはあって、世界第3位の死者数だが、感染者数日本の4.5倍と多いので、感染者数当たりの死亡者数を計算すると、実は日本の1.2倍と大差がない。
メキシコ人が、アメリカ人以上に、早期にタミフルを飲んでいるとは思えないので、
「死亡率の差は薬を飲む時期が早かったとしか考えられない」という言葉には、ほとんどエビデンスが存在しないといっていいだろう。
「香港で開かれるインフル対策の国際会議で発表する」そうだが、たぶん止めておいたほうが身のためだと思う。
案外、みんな鵜呑みにするのかもしれないけど。
*****************
今回、いろいろと調べて分ったのは、
そもそも、「日本の死者数が少ない」とぼく自身が誤解していたこと。
すごく大騒ぎしていたので、198人という死者数を「少ない」と見ていたんだけど、実は、ヨーロッパや中東なんか、ずっと死亡者が少なかったんだね。
それにしても、お粗末な内容の論文だった。
真に受けて、時間を無駄にした。
まあ、「タミフルが効いたのか?」という思い違いが解消できてよかったけど。
それにしても、ワクチンだの、タミフルだの、どうして薬剤を消費するのにこんなに一所懸命なんだろう、日本は。
医療費の削減は、国家的使命だろうに。。。
新型の豚インフルエンザによる日本の死亡率が世界的に極めて低かったのは、48時間以内に治療を受けた患者が多かったためだ。けいゆう病院(横浜市)の菅谷憲夫医師らのチームが国内で1千人の小児患者を分析してこう結論づけた。3日から香港で開かれるインフル対策の国際会議で発表する。
昨年6月から今年1月までに国内25病院に入院した小児の1千人分(平均年齢6.4歳)を調べた。亡くなったのは1人。症状は65%が息ができなくなるなどの呼吸器障害で、26%が脳症やけいれんなどの神経に障害が出るものだった。9%は脱水症状。
ほぼ全員の984人が抗ウイルス薬を飲んでいた。症状が出てから抗ウイルス薬を飲むまでの時間がわかった667人では、48時間以内に薬を飲んでいたのは89%だった。このうち29%が12時間以内、38%が12~24時間以内と、さらに早い時期に飲んでいた。
米国では48時間以内は39~51%にとどまった。抗ウイルス薬を飲んでいた小児の割合自体も75~79%と低かった。アルゼンチンは48時間以内が12~13%だった。
子どもから大人までの全体の死者数は米国が推計約1万2千人に対し日本は約200人と少ない。厚生労働省によると、人口10万人あたりの死亡率は、米国3.96(推計)、カナダ1.32、メキシコ1.05。日本0.16だった。
菅谷さんは「医療水準が変わらない米国などでは薬を飲み始めるのが発症から何日もたってからという例が少なくない。死亡率の差は薬を飲む時期が早かったとしか考えられない」と話している。(熊井洋美)
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ワクチンが実はほとんど効き目がなかった、ということが明らかになってきて、
(例えば、ドイツでは、感染者数約88000人、摂取率が5%以下であるにもかかわらず、死亡者60人、ポーランドは、国家がワクチンを輸入すらしていないにもかかわらず、死亡者16人)
ぼくも実は、タミフルが予想以上に効いたのかも、と思ってた。
まあ、ただいつもの癖で、エビデンスを探してたら、この記事がけっこううさんくさいことが分ってきた。
例えば、「米国の死者数が推計12000人」となっているが、WHOの南北アメリカ地域を統括するPAHOのHPを見てみると。。。
(PAHOは、WHOの各支部の中でも、最後まで数値報告をしている。)
http://new.paho.org/hq/index.php?option=com_content&task=view&id=2929&Itemid=2295
のページの
Regional Update, Pandemic (H1N1) 2009. (Published on May 24, 2010)
のレポートを読んでもらえばわかるんだけど(全部英語で読みにくいけど)、
そのレポートの13ページに、今年の5月24日時点での、南北アメリカの累積死者数が発表されている。
それによると、米国の死者数は、累積で2718人とある。しかも、その日付以降、死者数の報告がない。また、注意書きを読むと、米国の死者数は、インフルエンザ全体の死者数とある。つまり、新型インフルの死者数は、それ以下ということだ。
まあ、朝日の記事は、「推計」としているので、ウソとは言わないが、それにしても、この医師は、WHO以上の正確な情報をニュースソースとして持っているんだろうか?
また、
「厚生労働省によると、人口10万人あたりの死亡率は、米国3.96(推計)、カナダ1.32、メキシコ1.05。日本0.16だった。」
という記事は、明らかにミスリードの数字だ。
薬剤投与の時間の差を問題とする以上、比較すべきは、「人口当たり」ではなくて、「感染者数当たり」の死者数のはずだ。
アメリカの感染者数が、日本の約7倍と多い以上(感染者数報告は、WHOが2009年12月段階で集計を取りやめているので、その時点の数字を根拠にしている。)、「人口当たり」で数値を取るのは、明らかにミスリードだ。
(この程度のことがわからないのか?それとも悪意でしているのか?どちらにしても、酷い話だ。)
そこで、WHO(PAHO)の死亡者数を根拠に、感染者数当たりの志望者の割合を計算すると、
(日米間で、死亡者数が約12.5倍、感染者数が約7倍の差があるので)
アメリカの方が、死亡率が約1.7倍多いことになる。
たしかに、1.7倍は大きな数字だが、厚生労働省が発表する25倍の数字とは、明らかにインパクトが異なる。
ちなみに、WHO(PAHO)の報告によると、メキシコの死者数は1228人。
さすがに騒がれただけのことはあって、世界第3位の死者数だが、感染者数日本の4.5倍と多いので、感染者数当たりの死亡者数を計算すると、実は日本の1.2倍と大差がない。
メキシコ人が、アメリカ人以上に、早期にタミフルを飲んでいるとは思えないので、
「死亡率の差は薬を飲む時期が早かったとしか考えられない」という言葉には、ほとんどエビデンスが存在しないといっていいだろう。
「香港で開かれるインフル対策の国際会議で発表する」そうだが、たぶん止めておいたほうが身のためだと思う。
案外、みんな鵜呑みにするのかもしれないけど。
*****************
今回、いろいろと調べて分ったのは、
そもそも、「日本の死者数が少ない」とぼく自身が誤解していたこと。
すごく大騒ぎしていたので、198人という死者数を「少ない」と見ていたんだけど、実は、ヨーロッパや中東なんか、ずっと死亡者が少なかったんだね。
それにしても、お粗末な内容の論文だった。
真に受けて、時間を無駄にした。
まあ、「タミフルが効いたのか?」という思い違いが解消できてよかったけど。
それにしても、ワクチンだの、タミフルだの、どうして薬剤を消費するのにこんなに一所懸命なんだろう、日本は。
医療費の削減は、国家的使命だろうに。。。
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